果敢なき春暁の吐息

夜ひらく
眸にうつる
沖を歩む火影
雪化粧に溶けて
わすれえぬさんぜ
月が奏でていた静寂
啼きじゃくっていいの
胸に朗々ときらめく記憶
まろい優しさに堕ちていく
行きはよいよい帰りはこわい
なぞらえた虚無に昏ゆく安穏に
ふたりぼっち幸福を想いつづける
歪とこわれていた器は溶けていくよ
とろりとした極彩色の一滴を満たして
ありあまる空白へとあなたが息をそそぐ

うなぞこよりあなたを結びつける痛みへ
たとえ永劫の術を持たぬとも愛おしく
ときおり溶けあう世界から覗くもの
花沖へと流れる幾つもの夢の残骸
此の掌から零れ落ちないように
呼びあう燈火を抱きとどめて
限りなく不透明であるもの
今なおこの火を窶すこと
あなたが護った未来へ
果敢なき春暁の吐息
塞いだはずの情景
肺を満たす薄暮
きみを信じる
託された魂
光を紡ぐ


Kyojuro Rengoku / kmt / 2020.11.03